栗林公園は日本三大庭園にも劣らない国も認めた特別な名園だった

栗林公園は、国の特別名勝に指定されている日本庭園。
もともとの人気に加え、ミシュランの観光ガイドブック日本版で最高評価である三ツ星を獲得したことでも注目が集まり、国内だけでなく、海外からも多くの人が訪れる観光スポットとなっています。

日本を代表する日本庭園として、最初に名前が上がってくるのは「日本三大庭園」や「日本三名園」とも呼ばれている水戸の偕楽園、金沢の兼六園、岡山の後楽園。
行ったことはなくても名前くらいは聞いたことがあるというのは、日本三大の中に入ったもののみに与えられる知名度とも言えるかもしれません。

それに比べると知名度は高くない栗林公園ですが、訪れたことのある人や庭園巡りをしている人によると「三大庭園よりも好き」「4番目は栗林公園だ」といった声もあり、三大庭園に負けず劣らずの人気となっています。
そこで、今回はそんな栗林公園は日本三大庭園に比べて何が違うのかについて解説していきます。

栗林公園なのに栗の木はほとんどない

栗林公園という名前なのだから、さぞたくさんの栗の木があるのだろうと想像している方も少なくないようで、訪れてみると栗の木がまったく見当たらないと驚かれるようです。
実際、栗の木は0本ではないのですが、園内を巡っていても言われなければ気づかない程度に残されているだけで、ほとんどその姿を見ることはできません。

栗林公園の名前の由来は諸説ありますが、もともとは備荒を目的とし、北庭に多くの栗の木が植えられていたという説もあります。
しかし、10代藩主頼胤(よりたね)が、1850年に「鴨猟の邪魔になる」という理由で伐採。わずかに残った3本を移植したものの、すべて枯れてしまったと言われています。
現存する栗の木はその後、昭和になってから植栽されたもので、古くから植えられていたものは今では残っていません。

公式サイトによると、1640年には「栗林」の名が使われていたそうです。
実際に栗の木が群生していたという説以外に「種類に限らず木が生い茂った里山のことを中国では“栗林”と呼ぶ」ことから、この名前がついたとも言われています。
名前の由来には諸説あるようですが、いずれにしても「栗林公園」の名前から松の木が生い茂った美しい大名庭園を想像することは難しいかもしれません。

三大庭園っていつ、誰が決めたの?

庭園に限らずさまざまな「日本三大」がありますが、誰かが認定しているわけではありません。
そのため、いつ、誰が設定したのかは定かではありませんが、明治時代の写真集にはすでに「日本三名園」の表記が使用されているようです。

一方、明治時代から大正時代にかけて使用されていた国定教科書には「栗林公園は三公園に優れり」と表記されています。
これは、日本三名園は偕楽園、兼六園、後楽園の3つであると認めている一方で、栗林公園はそれ以上に素晴らしいと国が認めていたということになります。

また、日本庭園好きによると、栗林公園は三名園に勝るとも劣らないことから、もし3名園ではなく4名園だったとしたら、その枠には栗林公園が入るという人や、栗林公園は3名園よりも優れているという人もいらっしゃるようです。
もちろん、美しい、素晴らしいといった表現は人の感性に左右されるためどちらが上でどちらが下というものはありません。

日本三名園の価値と魅力

日本三大庭園は、いずれも江戸時代に藩主によって造られた池泉回遊式の日本庭園。
兼六園は「雪」、後楽園は「月」、偕楽園は「花」を表し、それぞれを合わせることで「雪月花」という熟語になります。

兼六園(石川県金沢市)

加賀藩の5代目藩主である前田綱紀によって別荘周辺の庭園を築庭したのが始まりとされています。
1985年には国の特別名勝に指定され、2009年のミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで最高ランクの三ツ星を獲得。
庭園を彩る草木が四季折々の色をつけるほか、冬に降り積もる雪によって描かれる雪化粧も魅力のひとつとされています。

後楽園(岡山県岡山市)

岡山藩主池田綱正が築庭した、岡山城の日本庭園、後楽園。
1952年には国の特別名勝に指定されており、2009年にはミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで最高ランクの三ツ星を獲得しています。
庭園は広い芝生に池や築山、水路などが配され、四季折々に移ろう景色を堪能できます。
さらに、期間限定のライトアップイベント「幻想庭園」では、昼間とは一味違った魅力を楽しめます。

偕楽園(茨城県水戸市)

1842年、水戸藩第9代藩主徳川斉昭によって築庭された偕楽園。
斉昭公自らが庭園の構想を練り、山を切り開いて創設したと言われています。
偕楽園で最も知られているのは約100種、3,000本にも及ぶ梅の木。
さらに、桜、つつじなども相まって、美しい花が咲き誇る「花の庭園」とも称されています。

栗林公園(香川県高松市)

栗林公園は、16世紀後半に地元の豪族佐藤氏の別邸の庭だったものが始まりと言われています。
そこから、生駒家家臣・西嶋八兵衛によって手がけられた治水工事で広大な日本庭園の基礎が築かれ、1642年から高松を治めるようになった松平頼重に引き継がれ歴代藩主が受け継ぎ、築庭していきました。
現在では、さまざまな造形をした1,000本を超える手入れ松や四季折々に彩られる草花が訪れた人の目を楽しませ、国の特別名勝にも指定されています。
2009年にはミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで最高評価の三ツ星を獲得するなど、他方から高い評価を得ています。

栗林公園の魅力は日本三大名園にも劣らない

日本三大庭園に負けずとも劣らない評価を得ていることは間違いありません。
春の紅梅や桜、夏のスイレンやハス、秋の紅葉など、四季折々の彩りや景観が楽しめ、春と秋に期間限定のライトアップイベントを開催するなど、訪れた人たちを楽しませるためにさまざまなイベントも開催しています。

栗林公園を訪れたら必ず立ち寄りたい「掬月亭」

栗林公園を訪れたら、必ず押さえておきたい観光スポットがいくつかあります。
まずひとつ目は「松の木」。
松の木は至る所にありますが、お手植え松や箱松、屏風松、鶴亀松に根上り五葉松と、見た目にも異なる松の木が園内には点在しています。
園内の松の木だけでもミシュラン二つ星を獲得しており、一見の価値があるので訪れた際にはすべてチェックしておくのがおすすめです。

次いで、「吹上」「偃月橋」「飛来峰」です。
「そんなにたくさん?」と思うかもしれませんが、すべて園内の一箇所に固まっているので見落とすことはまずありません。
特に美しい弧を描くアーチ型の橋、偃月橋は写真映え抜群。
栗林公園一のビュースポット飛来峰からも見えるので、ぜひ合わせてチェックしましょう。

最後に栗林公園のシンボル的な建物「掬月亭」です。
湖に迫り出すように建てられた大きな茶屋は、飛来峰から見える景色の中に映る建物として「栗林公園といえば掬月亭」と言われるくらい人気スポット。
ミシュラン・グリーンガイドでも単独で二つ星を獲得するなど、栗林公園を訪れたら必ず立ち寄っておきたいスポットとなっています。

その他、栗林公園の定番スポットをチェックしたい方はモデルコースを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

栗林公園のモデルコース90分と、押さえておくべき見どころについてご紹介